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ひこうきの道

 飛行機にも、道があります。
出発空港と到着空港を線で結んで、その線をたどって飛んでいるように私は思ってました。
でも、そんなはずは無く、電波によって誘導された眼に見えない道が上空に、あるのです。
その飛行機の道を『航空路』といいます。

 セスナなどの比較的小さな飛行機は、この航空路ではなく、有視界飛行といって、好きな所を(入ってはいけない場所もありますが)飛行できます。
飛行機は、地上に設置されているレーダーによって絶えずその位置を地上から監視されています。
レーダー上には、進行方向、便名、飛行高度がモニターされていて、空中衝突などが無いように管制官によって監視されているのです。

 飛行高度は、国内線と国際線、また目的地までの飛行時間によって決められます。
一般的に、国際線は国内線よりも飛行時間が長くなるので、上のほうを飛びます。
飛行機は航空路を飛ぶのですが、東行き、西行きというふうに航空路は何段にも分けられています。
例えば、東行きは1000フィートの奇数倍の高度、つまり9000フィート、11000フィート・・・という感じで、
西行きは1000フィートの偶数倍の高度、つまり10000フィート、12000フィート・・・という感じです。
また、かなり上空(3万フィート前後)になると、2000フィートごとに分けられているようです。

 飛行機は上の方を飛ぶ方が、空気抵抗が少なくなり、燃費がよくなるのでできるだけ上空を飛びます。
ですが、上がるためにも燃料を必要とするので、飛行距離によって今回は何フィートで飛ぶ、というのが離陸前には決まっています。
長距離国際線では、約100トンもの燃料を積んで離陸します。
一気に高高度まで上がるには重すぎて、上がることができません。
なので、ある程度のところでいくらか飛び、燃料が消費されて少し軽くなってから、更に上に昇るようです。

燃料と環境の関係を分かりやすく書いてある本があるので、その本から引用させてもらいます。

内田幹樹「機長からアナウンス2」 原書房 P.200〜
 より
省エネ飛行術

 飛行機はちょっとしたことで多くの燃料を食うことになる。だがもちろん、消費燃料を減らすに越したことはない。じつはその燃料の節約法もさまざまにあるのだ。
 まずは高いところを飛ぶ。これは高度が高くなればなるほど空気が薄くなるから、その分抵抗が少ない。抵抗が少ないと燃料を食わない、単純に言えばそうなる。その他にも空気が薄い分混合比も薄くてよいとかいろいろある。
 そして燃料のいちばん効率的な使い方は、砲弾型といって斜めに飛び上がっていってそれから放物線上に高度を下げていく方法だ。
 だからこの二つを組み合わせれば最も経済的なのだけれど、ただ、実際にはそう簡単にはいかない。
 ふつう長距離飛行の場合は、燃料をたくさん積んでいるから機体が重い。だから、まずは上がれるところまで上がって、燃料が減るにしたがって徐々に高度を上げていくという手法を取る。そうなると到着前がいちばん高い高度を飛んでいることになり、そこから砲弾型の落下部分に近いように、なるべくエンジンはアイドルに絞ったまますっと降りる。アイドルだとエアコンの効きが悪くなるので、夏など降下中に暑いと感じられる方も多いと思う。だいたいそういう飛び方をする。まあ、これがいまのところいちばん合理的な飛び方といわれている。
 この高度差で、つまり空気抵抗の強弱で燃料の減り方は格段に変わってしまう。車の燃費でいったらリッターあたり5キロと10キロくらいの違いが出てくる。
 成田から離陸しても、羽田との関係で運が悪いと高度を6000フィートに抑えられてしまうことがある。そのときばかりは悲鳴を上げそうになる。どんどん燃料が減っていってしまうのだ。
 というのも成田から離陸すると、羽田からの離発着ルートの下をくぐる形になる。時間帯によってはずっと低いところを飛び続けなければならなくなる。これで10分も6000フィートで飛ばされてはかなわない。
 じゃあスピードを上げて、その空域をさっさと抜けてしまえばいいと思われるかもしれないが、速度制限があるのと低空で空気抵抗が大きいためにパワーを上げると大量の燃料消費になってしまうのだ。
 成田からヨーロッパ便は日光の真上あたりまでずーっとそれが続く。やっと開放されて少し高く上がっても今度はロシアの事情がある。ロシア上空はルートが一本か二本と非常に少ないので、他の飛行機が上を飛んでいると言うケースが往々にしてある。そうなると自分が上がりたくても上がれない。
 そんなとき、パイロット間にも駆け引きみたいなものが生まれる。僕があるときロシア上空に入ったら、前にのんびり飛んでいるのがあって、こっちは上に上がりたくてもいけない状況だった。燃料ばっかり食うからいつまでも下についているわけにもいかない。そこで思い切って速度を上げ、その飛行機を下から追い抜いてその上に出たことがあった。
 あとでその会社から文句を言われたのを覚えている。違反でもなんでもないんだけどね。ま、そんなこせこせと恥ずかしいことではあるよな。
 なんで燃料節約に神経質になるかというと、なにも会社のコストのことばかり考えているわけではない。コストに関しては燃料以外にもさまざまな要素があるからだ。
 ただそのなかでも自分が持っている燃料が問題なのだ。
 いま飛行機に積んである燃料は、自分の命の長さを意味する。その燃料があるあいだに必ず安全にどこかに降りなければならない。だから一滴の燃料も無駄にできないのだ。
 のんびりとした管制や無駄な速度制限などされると文句の一言も言いたくなるのを分かってほしい。節約しながら飛ぶのは当たり前、一滴の燃料に乗客全員の命がかかっていると言う話なのだ。

 世界中の学者たちが頭を寄せ集めて、地球環境のことを研究しているIPCCってのがあるんですが、そこから出されている特別報告書「航空機と地球大気」っていう報告書の中に、エンジンとかそういうハードな部分での飛行機の改良は随分進んできた。あとは、管制方法や航空路などのソフトの整備によって飛行機の飛行時間や待ち時間を短縮することが必要だ、みたいなことが書かれていました。


参考文献:内田幹樹「機長からアナウンス2」 原書房
      石崎秀夫「機長のかばん」 講談社
      IPCC特別報告書「航空機と地球大気」


Last Up Date Feb. 7, 2004

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